解雇

 最後は電話一本での連絡だったとのこと。

 研修が終わった翌日、夜の8時にお宅にお邪魔して、お宅を後にしたのは10時を回っていた。その間、両親、特に父親のやり場のない怒りをただ聞いているだけだった。

 母親は、困惑する僕を気にしながらも、父親に意見を言うわけではなかった。

 僕は、ずっと両親の間に座っている本人のことが一番気になっていた。

 会社と家庭との結びつきの難しさ、一度こじれてしまったことの修復の難しさを思う。
 両者の話を聞いていて、何が何でも双方の誤解を解いて「修復すべき関係」ではなく、それよりも「次ぎ」に繋がる事を考えるべきだと僕は思っていた。

 それでも、両親は「次ぎ」に進むためには、しっかりと「区切り」をつけたいと考えた。

 翌日、お詫びの言葉と一緒に、家庭の意向を伝え、「後は直接、ご家庭にご連絡をお願いします」と話した。

 その日の午後、会社から「解雇ということでお願いします」と電話があったと、母親から連絡が入った。
 改めて話をするということではなく、それだけ伝えてきたということだった。
 父親のこだわっていたことは、あっさりとかわされた形になった。

「どちらが悪い」というものではない。

 結局は、「働き続ける」ために大切なことが欠けていたのだ。
 それは、まさしく、我々のようなジョブコーチや支援者の課題に他ならないのだと。 

 そう自分に言い聞かせるのだが、やっぱり、つらい…

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