歯医者

 小学校の頃、近所の歯医者でとても痛い思いをした。その医者は「ヤブ医者」ということであったが、近所にはそこしかなかった。以来、「歯医者はこわい」というイメージは固定化され、どんなに痛くなっても、よほどのことがない限り歯医者にはいかなかった。

 9月、やっとの思いで治療した歯のつめもの(?)がとれてしまったが、例によってそのまま放っておいた。不便と言えば、食事のたびに、欠けたところに詰まることで、不快ではあってもまだ我慢ができる範疇だった。

 先週の火曜日、和歌山の分析に行っていたときのこと。夜、突然左の奥歯が痛み出した。  和歌山から戻っても、翌日からはサービス管理責任者の研修会に講師として呼ばれていたため、市販の痛み止めを飲んでしのいだが、土曜日に歯医者に飛び込んだ。

「歯茎が炎症を起こしてます。まずは化膿を抑える薬をだします」  歯周病、歯槽膿漏…。そういった言葉が何度も出てきた。  若くはないのだ、ということを改めて突きつけられた思いで、病院を後にした。

 できることなら目をそむけていたい所だったのに。  仕事がハードになり、それなりの責任も負うようになってくれば、自分の体のコントロールもきちんとしなければいけない。  そうは思いつつも、未だに体の衰えを気にすることなく走り回っていた頃と同じだ、と思いこみたい自分がいることも、これまた事実…。

 それでも、薬局に行って、新しい歯ブラシを買ってきた。
(お)

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