「横断歩道は手をあげて、左右をよく見てわたりましょう」
というのが、横断歩道の渡り方の基本なんだろうけれど、考えてみたら、とっても難しいことをやっているんだ、とつくずく思った。
9月1日から事業主委託訓練をはじめたAさん。
ジョブコーチの公的な制度は使えないため、「独自のジョブコーチ」として、関わりを始めたのだが…。
仕事にも少しずつ慣れてきているが、それ以上に、帰りのバスに乗ることをどうしようか、と家庭、事業所と頭を悩ませている。
行きはバスを降りたら、そのまま横断歩道を渡ることなく、事業所に行くことができる。
しかし、帰りは、片側一車線ずつの信号機のない横断歩道をわたることとなる。
押しボタン式の信号機のある横断歩道を渡っていくとすると、次のバス停まで歩かなければいけない。
家庭では、訓練が決まったとき、「帰りは押しボタン式の信号の所まで歩いていくように」と教えた。しかし、しっかりとした歩道があるわけではなく、白線が引かれているだけ。
帰りの様子を見た事業所の担当者は、さらに遠回りをして裏道を通って信号機つきの横断歩道までいったらどうか? と。
右と左。車のスピード、大きさ、進行方向、遠近…
実に複雑な要素があるのだと改めて思った。
また、信号機つきの横断歩道だから安全か、といえばそうでもない。
「青になったら渡る」という機械的なものでもない。
安全かどうかの判断をする、ということこそ一番練習しないといけないことなのだろう。
しかし、色々なケースもあるから判断も難しい。
安全のことを考えれば、信号機のない横断歩道をわたらせる練習はしないほうがよいかもしれないが、彼女はずっと信号機のない横断歩道は渡れなくなってしまうのだろう。
時間がかかっても、丁寧に横断歩道を渡れるようにしてあげたい、とは思いつつも、なかなか踏ん切りがつけないでいる。
なぜ、手を挙げるの?
なぜ、左右を見るの?
左右の「何を」見るの?
そうしたことをしっかりと確認しなくてはいけないんだろう。
一方、親の立場に立ってみれば、危険なことはさせられない、という思いは強い。
その結果、てきないことが少しずつ、少しずつ増えていくんだろうなぁ、と。
さて、明日から、訓練が再開する。
帰り、どうしよう? 時間をとって横断歩道のわたり方を練習してみようか…?