しばらくの沈黙が続いた後、Aさんは言った。
「ジョブコーチさんが来ても、結局は何も変わらなかったってことですね」と。
更に続けて、「最初に話を聞いたときには、少しでも今の状態が変わるかと、ホントに期待したんです」と。
支援センターからジョブコーチ支援の依頼があったのは昨年。
40代の後半になり初めて発達障害の診断を受けた方。
30年近く働き続けている職場。
本人も、会社もそして一緒に働く従業員もみんな困り続けていた。
長く続いたイライラ、不協和音。
そうした中で、いきなり目の前に現れた「発達障害」という言葉。
障がいの特性などを説明していけば、なるほどと思い当たる所はたくさん出てくる。
しかし「なるほど」で済ますことができないのが仕事。
「で、どうすればうまくいくの?」という所こそ求められるのであるのだが…。
会社の思い、本人の自己理解、一緒に働く人の理解、それらを踏まえた上での具体的な対策、環境構築…。
教科書的にはそうであるけれど、一端こじれてしまった人間関係などは、ジョブコーチを名乗って顔を出してみてもどうにもできない。
結局は、何も具体的な動きが作れずに、それぞれの人の話を聞くことしか出来ない。
何ら手をうつことも出来ずに撤収せざるを得ない、という姿勢を感じるから、最初の言葉となったのだろう。
勿論、事業所としての課題を整理し、明確にするということはしてきた。
とは言え、一緒に働く従業員として、たまりにたまったストレスを切々と訴えても、何も変わらなかった、期待しただけ落胆は大きい、というのがAさんの本音だろう。
現場にジョブコーチ支援に入る際には、過度な期待を抱かせないように、言葉には注意を払っているつもりであっても、現場の人たちの思いは我々の想像を遙かに超えていることが多い。
言葉を発することが怖くなる、そんな思いに苛まれた週末…。