おかげさま

 全くのうっかりミスだった。

 いよいよ明後日に迫ったジョブコーチの養成研修。
 遠方の受講生は明日から浜松にやってくる。

 我々も前日の夜に会場のセッティングをするつもりで、全体研修の会場は、前日の夜からしっかりと押さえてある……はずだった。

 
 先週、利用料支払いのために、予約してある部屋を一つ、一つ確認していった。

「えっと、15日の夜は、ABルームで……」
「え? その日の予約は入っていません。Aルームは予約が入ってますす。」

 との返事。血の気がサーッとひいていくのがわかった。言葉が出なかった。

 この研修会場を使用できなかったのは一度だけ。
 スタッフの皆さんの心遣いや配慮も行き届いている。
 すっかり安心しきっていたのだった。
 ずっと前に仮予約を入れてから確認を怠った僕のミス。

 ……朝早く、会場の準備をするしかない。
 準備は間に合うとしても、前日に準備をすっかり終えて、当日を迎えたかった。
 受講生の皆さんは緊張してやってくる。
 迎える側が、当日の朝、落ち着かない状態は絶対に良くないのに……。

 翌日、使用料金を払いに行った水野から電話が入った。

「前の日だけれど、Aルームも使えるようになった」と。

 聞くところによると、その日は、会場主催の勉強会ということで、急遽、Cルームに会場を変更してくれた、とのことだった。
 研修会場の自主企画であったということも幸いだったが、スタッフが、「局長、変わってあげられないですかね?」と進言してくれたのだった。

「当日の朝、30分間で準備」の段取りをしていただけに、涙が出そうになった。
 これで研修初日の朝、ゆったりとした気持ちで受講生の皆さんを迎えることができる……。

 ……「おかげさま」という言葉が浮かんだ。

 シビアな現場の毎日が続くと、課題を浮き彫りにするために「まずい点」をしっかり見るようになる。すると、どうしても思考が攻撃的になったり、否定的になってしまう。
 とにかく気持ちが「とんがって」しまう。そして、人を気遣う余裕、ゆとりが知らぬ間に薄くなってしまっている。そんな自分に気がつく。

 今回の件で、そんな自分にハッとすると同時に、改めて、色々な人に支えられていることを思う。

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