少しずつ前に

 去年の4月末。Aさんが就職して一年間を振り返ったときのこと。
 同じ職場の方達から、「何とかして!」「はたらけるの?」という声があがっていた。

 あれから一年。
 悪戦苦闘、四苦八苦。
 七転八倒、五里霧中。
 試行錯誤、紆余曲折……。

 2年目を終えて、事業所とお母さんと、そして僕と水野で話し合いを持った。
 事業所からの報告と、家庭からの報告と。
 今、直面している課題に対するそれぞれの立場からの意見交換と…。

 事業所と本人のがんばり、そして家族の支え。
 我々の力も少しは……。(^^ゞ

 総務部長が言った。

「彼女は、今の仕事は十分戦力になっている」と。

 去年、一般比2~3割と言われていた彼女だった。
 それがこの一年で、「仕事面」においては、十分な評価を得られるようになったのだ。
 更に続けた。

「障害の特性としてコミュニケーションが苦手なのはわかるけれど、それでも、少しでもこの会社の一員として成長していって欲しい」と。

 総務部長の言葉だけではなく、現場で彼女と一緒に関わる人たちの言葉や態度からも、彼女に対し懐が深くなったことを感じる。

 彼女自身の頑張りがあり、「働きたい」という強い思いがある。
 彼女を会社の一員として大切に育てていこうとする事業所がある。

 この先も、やっぱり、色々なトラブルが出てくるだろうけれど、確実に、皆の体力がついてきたことを、非常に嬉しく思う。

 帰りの車の中、水野との話も弾んだものになった…。

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