贈りもの

 「水野さんも一緒に行って下さい。お料理一緒にたべましょう。」

 そう言っていたのは、新入社員の歓迎会の時。

 特別支援学校を今年3月に卒業し、4月から正規社員として企業に入社した彼女。それこそ、社会に出てなにもかもが彼女にとっては初めてのこと。ましてや、歓迎会って!?なにするの? 不安がいっぱいだったに違いない。

 ずいぶん職場にも馴染んできて、今回の忘年会はそれはそれは楽しみにしていた。もちろん私には、彼女から声はかからない。

 支援する過程で本当にいろんな事があって、私達ジョブコーチと事業所の方々が、何度も何度も真剣に話し合いの場をもってきた。

 もちろんご家族との連絡も頻繁に行った。そんな中、お母さんが、

「就職できたら終わりだと思っていました。継続していくのは本当に大変なんですね。」

・・・と、しみじみと。

 救いは、彼女が元気いっぱいに出勤する後ろ姿。

「毎日祈るように送りだしています。」と母親は言っていた。

 母親とメールのやりとりをしていると、その日帰ってきた子供の様子によって母親の心が不安定になる様子がよくわかる。

 パニックを起こしたことを子供から聞くと、“連日報道の雇用問題厳しいですね。怖いです。”と不安な様子。

 そして、先日、忘年会に子供が参加した時のメールは本当に嬉しそうだった。それは迎えに行った時に係長さんから言われた一言から始まっていた。

「“縁あって一緒に仕事するようになったので、一緒に頑張っていきましょう。”そういってくれて、本当に嬉しかったです。こんな忘年会に参加させていただくだけでも夢みたいな話で、雲の上歩いているようで、誰も想像できなかった所にいるよなと思ってしまいました。本当に誰よりたくさんの方にお世話していただけることは幸せですよね。」

というメールだった。

 今も問題はたくさんある。時間の経過によって従業員の方が慣れにより自発的なサポートはできつつあるが、ジョブコーチが支援することによって意図的に行うサポートのところは、私達の力不足もありまだ時間がかかりそうである。

 お母さんからのにこにこ絵文字がたくさん入ったメールが、私達支援者には何よりも嬉しい贈りものである。

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