地域とつながる

 脳性麻痺の我が子は、21歳を過ぎた頃からどうも歩行の様子が変になってきた。
「あれ、あんな歩き方してたっけ?なんだか強張って歩きにくそうな。」と、思っている内に、突然足に力が入らなくなって立ち上がれなくなった。
 病院に行くと「腰椎椎間板ヘルニア」と診断された。

 自力歩行もままならない子どもを家に置いては出かけられず、かといって仕事の予定は今年度びっしり詰まっている。
 皆に迷惑を掛けられないが、無理して仕事に出ても中途半端になる。
 ましてそんな状態で支援現場に入っても良い支援は出来ない。

 
 そこで、相談支援事業所に相談に行っていろいろなサービスの話を聞いた。
 こちらのニーズを理解してくれて、素早く対応してくれるその様子に、
「あー一人じゃないんだ。力を貸してくれる人達がいるんだ。」
 と、改めて福祉の手厚さに感激した。

 家族や高齢の両親に協力してもらう事で切り抜けている人もまだまだ多いのではと思う。
 働いている障害を持っている人達の中にも、一人で余暇を過ごす事のできない人は、リフレッシュの為に母親や父親が連れて出かけていると言う話を聞くことがある。

 ウィークデイは厳しい仕事をこなし、日曜は障害を持つ我が子と余暇を過ごし、高齢の親の介護も……、母親はいったい、いつほっとできるのだろうか?
 お風呂に入っている時とお布団に入ったとき!? 
 この少しの時間だけが唯一自分の時間になる。

 誰の世話にもならない。
 自分が頑張る。
 誰かを頼るのは責任の放棄。
 後ろめたさがつきまとう。

 今まではそんな頑なな思考の私だった。
 何とかやり過ごしてきた。
 しかし、自分も歳をとってくると家族では抱えきれない事が沢山起こってくる。

 ショートステイを利用する為に訪問した先で、
「あれ、Sくんって、水野さんの子供さんなんだ。」
 と、うちのジョブコーチ養成研修の修了者が担当者だった。

 まだまだ、全然知らない人に預ける事に抵抗がある私だから、顔見知りの担当者にほっとして、この時ばかりはこの仕事をしてきて良かったと思った。

 親が外に出て行く事に躊躇していては、子供は幸せになれない。
 子供が安心出来るためには、まず、親が多くの人達と繋がって安心出来る場所と確認出来ている事が大切になる。

 また、地域の人達にもあそこに障害を持っている青年がいると知っていて欲しい。
 ひた隠しにしていては子供は幸せにはならない。
 ずっと、遠くの床屋さんに行っていた我が子だが、先日、家から歩いて2分位の床屋さんにはじめて行った。
「直ぐ近くに住んでいます。知的な遅れがあるのですが、今までも床屋さんに行っていたのでじっと座っていれます。これから月1回一人できますのでよろしくお願いします。」

 こんな風にお願い出来るようになった自分に少しびっくりした。

「自分の子供のこれからの人生は地域の人や地域の専門家に任せ、私は他の障害をもった方達の人生のお手伝いをしよう」

 人と繋がる、社会と繋がる……。
 でも一歩一歩……。  (み)

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