自分の感受性くらい

 ぱさぱさに乾いてゆく心を
 ひとのせいにはするな
 みずから水やりを怠っておいて


  気難しくなってきたのを
  友人のせいにはするな
  しなやかさを失ったのはどちらなのか


苛立つのを
近親のせいにするな
なにもかも下手だったのはわたくし


  初心消えかかるのを
  暮らしのせいにはするな
  そもそもが ひよわな志にすぎなかった


駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄


 自分の感受性ぐらい
 自分で守れ
 ばかものよ


 『自分の感受性くらい』 茨木のり子
(中央公論社 現代の詩人7 茨木のり子)


 最近、この詩をよく思い出す。

 いつもヘラヘラしていたいと思う。
 しかし、そうではいられない時もある。

 自分の足りないところを他人や時代のせいにはしていないか?
 自問自答することが増えてきた。

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