どうしたら、あのような品格が醸し出せるのだろう?
お目にかかる度にいつも圧倒される。されてきた。
この4月から、関わりを持っている事業所の所長さんが交代するということで、ご挨拶に伺った。
時間にしたら15分程度。
それでも、終わった後、シャツは汗びっしょりだった。
今から3年前。
特別支援学校の卒業生のジョブコーチ支援に入った。
実習も2度ほど重ねてきていることもあり、新規就職時の短期間の支援で大丈夫だろうと事業所は思っていたという。
ところがふたをあけてみると、様々な問題が出てきた。
簡単なことではなく、また、かなり長期的な関わりが必要という判断がされた。
「障害者雇用は企業が責任を負うべき事」
「外部の専門家の力が必要ならば、お願いするべき」
「制度の中でしてもらえること」ではなく、「事業所としてするべきことをする」、という考えに基づき、その時から、その事業所との個別の契約に基づく関わりが始まった。
我々を朝礼時に従業員300名の前で紹介し、さらに、課題となっていた女性従業員を対象にした説明会でも、その所長さんは、参加した女性従業員に「よろしくお願いしたい」と訴えた。
その時の凛とした姿は今でも脳裏に焼き付いている。
以来3年間が経つ。
色々なことがあった。
そのたびに、現場に入り、周りの方と話をし…。家庭に連絡し、家族の思いを伝え…。
総務部長、生産部長、看護師、そして我々とで色々な対応、対策を一緒に考えてきた。
非常に重苦しい空気に包まれる事も一度や二度ではなかった。
「もう、何とかしてほしい」「どうして私達が…」
そんな声も何度も出てきた。
一年経ち、二年経ち…。
そして三年。
時間の経過と共に、我々が現場に行くことは本当に少なくなっていった。
一番苦労してきた職場の方々が、今では一番、彼女の行動パターンを読み、適切な対応がとれている。
我々がするような対応を現場の人たちがしっかりとしてくれている……。
そんな職場環境が作られてきている。
仕事の領域も、三年前よりも増え、そのことにより、関わる人たちも増えてきた。
勿論、問題がなくなったわけではなく、本人の障害が軽くなったわけではない。
支える力がついてきた、ということと、本人の中に社会人としての自覚、意識が目に見えない所で、確実に育って来ているからだろうと思う。
ここまで育ててきた事業所のすごさを改めて思う。
所長さんが顧問になった。
生産部長の定年。総務部長の交代…。
この3月で一気に体制が変わった。
それでも、会社は続き、本人も働き続ける。
席上、所長さんから
「引き続き、よろしくお願いします」と言われた。
「何らかの形で関わりを持たせてもらえるならば、こんなに嬉しいことはありません」
そうお答えした。
所長さんとは、決してたくさんの言葉を交わしたわけではないが、事業所の方々と話しをする中、随所にその姿勢、信念を感じてきた。
物腰が柔らかく、穏やかな物言いの中に感じる圧倒的な存在感。
所長さんだけではなく、その事業所と関わりを持たせていただくことで、実にたくさんの事を学ばせてもらった。
3年という月日が経ち、人も変わり、我々の関わり方もまた、新しい段階に入った。
事業所と外部の支援者がどのような関わりを持っていけばよいのか?
まだまだ、模索は続くし、今まで関わって下さった方々がいなくなることは、何とも寂しい。
しかし、確実に新しいステージに入ったという実感がある。
ゼロからのリスタートではなく、今まで積み上げてきたものの上に、何を、どのように積み重ねていくのか?
それが楽しみでもある。
そして、一緒に考えていけば、必ず良い方向に向かっていく、という実感が何よりも嬉しく思う。