「優しさを貫くのは、簡単な事ではありませんよ。
口先だけの優しさは、かえって人を傷つける結果となります。」
連休中ということもあって、以前から読みたいと思っていた『働く君に贈る25の言葉』を手に取った。
今年社会人になったばかりの甥に向けた手紙という形で書き進められている。
その語り口は優しくそして厳しい。
今の自分の有り様を見つめ直し、何度も途中で本を閉じ、考え込んでしまった。
「志とは、多くの人が共有出来る強い願望だと思います。その志を実現するために、周りの人が協力しよう、力を貸そうとも思えるものです。」(p31)
「相手を尊重する」という気持ちをもたないまま、形だけの挨拶、お礼をしていても、いずれ化けの皮が剥がれます。いくら完璧な敬語を使っていても、実際に相手を尊重する行動をとっていなければ、相手に通じないのです」(p67)
「必死の努力を実践してきた人の言葉は、話し方がたとえ下手であったとしても周りの人に伝わる」(p111)
他にも
「一人前になろうと思ったら、最低でも10年はかかりますよ。仕事というものは、そんなに甘いものではない。腰を据えて取り組まなければモノにはなりません。」(p128)
などという言葉には、どきりとした。
そして何よりも、この本の根底に流れている、著者の母親の姿、言葉に何よりも心を揺さぶられた。
「いつも思い出すのは『運命は引き受けよう」』と言って微笑む母の姿です。26歳で未亡人になって、男4人兄弟を育てるために働きづめに働いた母の姿です。しかし、母は愚痴を言うこともなく、どんなときでもニコニコ笑っていました」
「運命を引き受けて、その中でがんばろうね。
がんばっても結果が出ないかもしれない。
だけど、がんばらなければ、何も生まれてこないじゃないの――」(p178)
そんな母親に育てられたからこそ、自閉症の長男や、奥さんの鬱病、自殺未遂などを乗り越えてこられたんだろうと……。
だからこそ一つ一つの言葉が重く響いてくるのだろうと……。
「働く君に贈る25の言葉」 (佐々木常夫 著 WAVE出版、2010)