「辛い・・・」

 母 「ただいま。どう仕事?」

 子 「辛い・・・」

 “ うっ!きたか、もしかして、行きたくないと思っている? ”

 どうしよう(汗)私はおろおろしながら、でもそれをみせてはいけないし、“落ち着いて、落ち着いて。”と自分に言い聞かせながら子供にこう尋ねた。

 母 「辛いにもいろいろあるんだけどなぁ。一番:辛いからもう行きたくない。二番:辛いけど頑張る。さあ、何番?」

     ・・・・・・・

 子 「辛いけど行く。」

 母 「うん分かった。明日も頑張ろう。」

と私は一安心して、夕食の用意を始めた。

 『お母さんは働かせたいんだけど、子供は働く意欲が無い人がいます。そういう人は長続きしません。』

 そんな事を企業の方が言われるのを良く聞く。私も一番恐れていた事。事業主委託訓練を始めて一ヶ月、子供が弱音を吐いた。子供が弱音を吐くと、母親は気弱になる。子供の心が揺れると、母親の心はもっと大きく揺れ動く。

 子供の仕事の事にも口だしをしていた私だが、その日から一切口にしないようにした。何か気になる事を口にしたら、「それは鈴木さんに聞いてみよう。」と支援者の存在を意識させ、家庭の役割として、美味しい食事を作りほっとできる空間を演出することに努めた。

 そんなこんなで2ヶ月が経ち、子供もやっと新しい環境に心も体も慣れてきたようだ。

 先日トライアル雇用に移行するためのケース会議が行われた。総勢10人での会議だ。支援者としてケース会議に参加する時に「こんなにたくさんの人が子供の為に集まってくれて本当に申し訳ないです。」というお母さんの言葉をたびたび聞いてきたが、私も実感した。本当に嬉しく思った。なにより、子供の存在が社会で認知されていくということが有り難いし、支える人が増えていく事がどんなに心強いことか。家族以外の支える人をどれだけ増やせるのかが、子供の人生の豊かさにも影響してくる。

 他人なんて信用できない、社会はあてにならない、自分がしっかりしなければ、そう思い続けてきた私だが、今はいろいろな人の支えに心から感謝している。やはり人は一人では生きていけない。

 

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