「最近は職場で何か困った時があってもジョブコーチなんか思い浮かべもしなかったでしょ?」
 その僕の問いかけに彼はちょっと答えにくそうな顔をしながらも「はい…」と言った。
「それでいいんだよ。僕たちはボツボツ消えていく時なんだから」と僕は続けた。そして「仕事の事は職場の○○さんや××さんがいるし、保健室の△△さんもいる」「困った時には、そうした人たちを頼っていけばいいんだから」と。

 彼はこの春、特別支援学校を卒業してA社に就職した。
 手帳は精神保健福祉手帳。
 家庭や学校はとても心配をしていた。
 事業所はこれまで障害者雇用に取り組み、社内には複数名の企業内ジョブコーチも配置しているが、最初は家庭や学校との連携や生活面のサポートなどから、訪問型ジョブコーチとしてまずは僕たちが支援に関わることになった。

 1週間に2回の現場支援が1週間に1度。更には2週間に1度。そして1ヶ月に1度…という具合に少しずつ少しずつ支援頻度も時間も減っていった。
 メンタル面での負荷がどの程度なのか?
「大丈夫です」という本人の言葉は本当に大丈夫なのか?
 等々、職場としても手探りの状態が続いていった。
 それでも、少しずつ、職場の丁寧な関わりや気遣いの中で、彼の「大丈夫」という言葉に対する信用が生まれていき、そのうち、伝えるべきことははっきりと伝えていくようになっていった。

 こうなると我々の出番はなくなってくる。
 家庭での様子や気がついたことなど、些細なことでも拾い上げ、この先のトラブルとなり得るようなことがあれば、テーブルの上に出しておく。
 あれほど就職前に心配していた家族も、すっかり安心している様子だった。

 勿論、この先、何もないわけはない。
 しかし、この時期で一番大切なことは、何かあった時に会社内でしっかり相談でき、一緒に考え、解決の方法を一緒に考えてくれる場所をつくっておくことである。
 そして、何かあった時には、そうした場所を活用できるようにすることだ。

「今日の会議の目的は、僕たち外部のジョブコーチは○○さんには必要がなくなったので、これまでやってきたことをしっかり整理し、将来的な課題となるであろうことを○○さんと会社の方に伝えることです」

 本人、総務の方々、そして現場の方々。
 3月、4月の様々な心配事が笑い話になった日だった。
「良い会社に入れた?」
「はい」
 そういう彼の言葉がとても嬉しかった。

Comments are closed.

Post Navigation